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2006夏 甲子園への道(大会総括) 〜2回戦vs都府中西 観戦記 このチームでなぜ負けるのか〜 2006/07/22 |
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前日の急な雷雨で試合日程がずれて迎えた16日、学院vs都府中西の
試合も、当初の12時半から14時に試合開始が変更となりました。初戦に
比べてスタンドには大勢のOBにお集まり頂き、改めてこの場をお借りして
感謝申し上げます。試合はまさかの敗戦を喫し、総括とは銘打ったものの
未だになぜ負けたのか、このチームで勝てずしてどうやったら勝てるのか、
自分自身心の整理を付けられない状況です。きっと観戦された方々も皆さん
多かれ少なかれ似たような思いを抱かれていることと思います。
さて、その試合を振り返ります。試合前のシートノックは非常に皆動きが 軽く、期末試験から1日(しか、と言うのが正解かも知れませんが)空いた 分、初戦に比べて随分と落ち着いた印象を受けました。対する都府中西も なかなかの仕上がりで、戦前から好ゲームは予想されました。 先攻は都府中西。先発したエースの玉地投手は相変わらず踏み出す左足の膝が 割れて春の頃の球威、切れは戻ってないものの、初戦よりはかなり制球に心掛け ていました。1回戦で20点も取った都府中西打線だけに、1球1球を丹念に 放っている感じでした。またバックも実に好守備で玉地投手を盛り立てました。 初回もセンターの安江選手がポテンヒットの間に三塁を狙った一塁ランナーを 好返球で刺しピンチを切り抜け、ショートの門多選手も再三に渡るファイン プレーで支えました。加えて先発マスクをかぶった2年生キャッチャーの高橋 選手に至っては相手の盗塁を2度とも見事に封じ、将来性を感じさせるとともに、 女房役としては最高のパフォーマンスだったと言えます。これだけのバックの 援護があれば学院のエースである以上しっかりと投げ抜いてもらわなければ 困ります。そして実際その期待通り、玉地投手は強力都府中西打線に立ちはだかり ました。 一方、先発した相手のエースは長身右の本格派、一見ダルビッシュを彷彿と させるような雰囲気です。ただステップの足がかなり三塁側にクロスする、やや 変則気味な面もありました。しかし長身から繰り出されるストレートは威力十分、 かつスライダーも混ぜられ、学院打線は翻弄されました。2回裏に初戦のヒーロー 見村選手が三遊間にヒットを放ち突破口を開いたものの、そう簡単には崩せる ピッチャーではありませんでした。ネット裏から見ていて相当三塁側にステップ するだけに、右バッターは徹底的にベース寄りに構えてインコースには投げさせ ない、そしてインコースよりは力が落ちるアウトコースに的を絞って右打ちを 心掛ける、これが攻略の鉄則で、事実学院打線はその通り実践していました。が、 肝心の右狙いが出来ません。それどころか要所で凡フライを打ち上げる有り様、 指示が曖昧なのか、選手の力量がそこまでなのか、そこは不明ですが、明確な 戦術は伝わってきませんでした。3回、4回と、いずれも相手がくれた四死球で 先制機を掴みましたが後続を断たれ、投手戦の様相を帯びていくことになります。 しかし均衡を破ったのは学院。5回裏、久喜選手がチーム2本目のヒットを レフト前に運ぶと、何とかバントで送って二死2塁の場面、1番の湯籐選手が ライト線へタイムリーツーベース(サードを欲張ってアウト)で、喉から手が出る ほど欲しかった先取点を取りました。応援に駆けつけてくれたブラスバンド部と ともにスタンドは「紺碧の空」大合唱で歓喜の渦、ベンチと一体となって勝利に 突き進む最高の瞬間でした。さらにこの回当たりから相手のエースに微妙な変化が 出始めました。特にスライダーを投げるときに身体のバランスを崩すのです。 おまけにストレートの球威や制球力も序盤とは明らかに落ちてきていました。 意外と体力がないのかも?ネット裏ではそう感じておりましたが、果たして ベンチはいつ気付いたか。これなら後半に一気に崩せると、正直期待を寄せた ほどです。 点を取った直後の6回表、いつもならピリッとしないことが多い守りですが、 玉地投手が一死後に与えた余計な四球のランナーを高橋捕手が見事に盗塁阻止し、 結局三者で切って取りました。相手ベンチの落胆ぶりがはっきり見て取れ、 流れは完全に学院に来ていました。その裏の攻撃でも先頭の安江選手がセーフ ティバントを決めて出塁、3番小澤選手がきっちり送って注目の4番門多選手に 繋ぐ、もう押せ押せムード一色です。今から思えばここで追加点を着実に取って いれば、この試合の行方はほぼ決まっていたのでしょう。残念ながら門多選手は 大きな大きなセンターフライ、続く来島選手が四球を選んでチャンスは続いた ものの、ラッキーボーイ的存在の見村選手はファーストファールフライに倒れ、 惜しくも逸機しました。 あとは玉地投手の右腕、あるいは継投策に期待か。攻撃陣がもどかしいときは 投手陣が踏ん張る、これが長丁場の大会を確実に勝ち進んでいく常道です。迎えた 7回表も、おそらくベンチ、スタンドの全員、間違いなく抑えてくれると思って いたことでしょう。二死1、2塁で打席に立った相手エース、変化球に全くタイ ミングが合わず、この場面でもストレートを見せ球にカーブでカウントを稼いで 早々に追い込みました。しかし誰もが何ら疑うことなく、もう一球スライダーか カーブで三振、もしくは内野ゴロをイメージした矢先、あろうことか外角高めに 力のないストレートを放り、ものの見事にセンター右へ弾き返されました。悪夢の 逆転ツーベース、信じられない一瞬でした。悪くても1-0の完封ゲームという シナリオが描かれていた中で、どうして投げてはいけない球を投げたのか、魔が 差したという理由だけでは説明が付かない、納得がいかない一球です。試合では 相手のバッテリーに打たせてはいけない、打たせるとピッチングも勢いづかせて しまう、これはセオリーです。そんな基本的なことは重々承知していたはずなのに 細心の注意を払えなかったのは本当に本当に残念で仕方ありません。 逆転されてもなお、球威や制球力が落ちた相手エースを崩すチャンスはありま した。7回裏が二死2塁で湯籐選手、最終回が二死3塁で代打林選手、しかし いずれもあと一本は出ませんでした。とはいえこれは結果論、選手を責める わけにはいきません。これほどまでに理にかなった試合運びが出来たことは 確かで、要は逆転を喫した一球だけが悔やまれる内容でした。それにしても、 このチームですら勝てないのはどうしてなのか?この代を知っているOBで あればあるほど、疑問に感じることと思います。勝負の厳しさと言ってしまえば それまでですが、4回戦で対戦すると信じていた早実とも互角に戦えたでしょうし、 そもそもが春の大会で日大三高を苦しめた学院なのですから、正直ここで消える ことは想定していませんでした。 このチームはすでにお伝えしている通り松本監督の最後の挑戦で、優秀の美を 飾るにはもってこいの戦力だったと言えます。ただ、期末試験というどうしても 動かすことの出来ない学校の日程もあり(これは常に宿命ですが)、万全の調子で 大会に臨めなかったことはあるでしょう。と言いながらも、負けた言い訳をする つもりはありません。自分たちの実力を出し切れなかったことは、結局は底力が なかったことと同じです。甲子園を勝ちとるチームであるならばこの程度の逆境は 当然乗り越えなければなりませんし、もっと言えば圧倒的な力の差を見せつけない と西東京を勝ち抜くことは出来ません。数年に一度充実した戦力の代がありますが、 結果的には常に敗れています。一体どうすれば勝てるのか、どうやれば負けない のか、真剣に考えなければならない段階です。幸い我々には早稲田大学野球部と いう、最も身近に手本とすべき野球があります。甲子園等で数多くの修羅場をくぐり 抜け野球を知り尽くした集団に教えを乞うのは至極当たり前のことですし、それが 許される立場にあること、これを最大限活かさない手はありません。4年生には 竹内仁史選手がレギュラーで活躍しておりますし、2年生にも3人、1年生にも 1人と学院卒の選手が必死に頑張っている状況で、その予備軍である現役の学院 野球部員が技術的にも精神的にもレベル向上することは大学、学院双方にとって 好ましいことです。慶応ではこうした連携はとっくに出来ていると聞きますし、 慶応に出来ることが我々に出来ないはずはありません。今後もっともっと大学との 関係を密にしてさらに上の野球を目指す、これがまさに今学院に求められている ことではないでしょうか。 松本監督が6年間で築いてくれた新たな伝統、改めてOB会としましても感謝 します。残念ながら甲子園という大いなる夢は実現出来ませんでしたが、確実に 松本イズムは浸透しているはずです。後任には松橋助監督が就任し、残された 課題に取り組んでもらうことになります。松橋新監督は、「甲子園に行きたい。 選手達はみんな必死に取り組んでいる」と、敗戦の翌日から新チームをスタート させ、早速秋に向けた練習を開始しています。偉大な3年生が抜けた穴は大きい でしょうが、2年、1年のフレッシュな顔ぶれが次の1ページをしっかり切り 開いてくれることでしょう。OBの私たちは、また新鮮な期待を持って見守って あげましょう。この夏の敗北が決して無駄にならないように・・・ 夢をくれた3年生の皆さん、本当にお疲れ様でした。今はまだ気が抜けた状態 でしょうが、君たちの力は少なくとも我々先輩は知っているので、もし大学で 野球を続けることを決断しても立派にやり抜けると思ってます。いろいろとOB 会としてもサポートしますので、自信持って頑張って下さい。そして松本監督、 いつの日か早大学院が甲子園に出場することを、1ファンとしてこれからも見守り 続けていて下さい。本当に本当にありがとうございました。 |
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2006.07.22
(文責:広崎正隆 S63卒) |
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