2007秋季大会総括 〜一筋の光明を見出すも、壁厚く〜 2007/10/12




 「内容で勝って結果で負けた」―秋季大会のブロック決勝戦、東海 大菅生との激闘は、この一語に尽きると言えます。再三に渡り得点圏 に走者を進めながら、相手を土俵際まで何度となく追い込んでおきな がら、結局あと一本が出ずに、逆に相手に少ないチャンスを活かされ ての敗戦。試合後の選手の涙が、悔しさ以上に、不甲斐なさを物語っ ていたように思えます。

 今大会、学院は4年ぶりにブロック決勝に駒を進めました。初戦の 都武蔵戦以外はすべて相手に先制を許す苦しい展開が続いたにもかか わらず中盤以降に巻き返す、粘りある戦いが象徴的でした。特に2回 戦の都足立西戦では、2点ビハインドのまま9回2死まで追い込まれ、 そこから四球、死球と続いて主軸が意地の打撃で同点に、延長に入っ ても11回、相手にノーヒットで1点献上しましたが、その裏またして も主軸の意地で逆転サヨナラ。学院の歴史においても、ここまで劇的 な勝ち方は記憶にありません。同時に、3年ぶりに翌春の本大会出場 権を勝ち取りました!この勢いを駆って次の都永山戦もコールド勝ち、 そして冒頭の決勝戦となったわけです。

 勝てば34年ぶりの秋季本大会出場がかかる大事な一戦。相手もこの 夏の西東京で第一シードだっただけに不足なし。小雨交じりの中、学 院サイドは激しい熱気に包まれていました。先攻の学院、初回いきな り先頭打者の北村選手がセンター前にクリーンヒット、センターが後 逸する間に悠々と三進、三塁側の学院ベンチや応援席は雄叫びを挙げ ました。ただ、試合開始直後のプレーで、相手守備陣も地に足が付い てない状況で、おまけに広々とした球場でセンター最深部まで転がっ ていった打球、なぜ一気に本塁突入しなかったのか、疑問が残ります。 間違いなくクロスプレーで、仮にアウトになったとしても、開始早々 のカウンターパンチは先発した相手エースにも動揺を与えますし、そ の後の相手の守りにも多大な緊張感をもたらしたはずです。野球はい くら三塁まで進んでも本塁を取らねば意味がない、このあまりにも基 本的なことが一瞬のうちに判断出来ないのは、チームが発展途上であ ることを考慮しても普段の練習で徹底出来ていない現れです。このあ と2番西竹選手の投手ゴロで相手投手がすかさず三塁へ送球、油断した のかアウトになる始末、結局この盛り上がった初回は無得点でした。 敵失でもらった願ってもないチャンスを、拙い走塁や、あるいはスク イズすらちらつかせずに逆に相手投手を自ら立ち直らせてしまったの は、野球という奥深いスポーツを勉強していない証左であり、今後学 院が厳しい戦いを勝ち抜いて栄冠に輝く上でも大きな課題です。

 この後の展開は、ある種よくある負けパターンでした。逆境を凌い だ菅生は1回裏に先頭打者がレフト線2塁打を放ち確実に送って先制点、 一方で学院は3回、4回、5回、7回と4イニング1、3塁のチャンス、6回 も一死2塁のチャンスであと一本が出ない、おまけにそのほとんどが エラーやミスで拡大したチャンスだったにもかかわらず活かせない。 そうこうする間に7回裏、2回以降粘り強く立ちはだかってきたエース 鶴谷投手が自らのバント処理ミスも重なってついに致命的な4点を失 ってしまう・・・東海大菅生に凄みは一切感じませんでしたが、どん なピンチを迎えても最後の本塁は渡さない、そして取れるときに着実 に得点する、出場した選手だけでなく、ベンチにいる控え選手らも含 めてこうした基本戦術が身に付いていたと言えます。一日にしてこう したチーム作りは出来ません。何度も何度も繰り返し選手に意識を植 え付けて初めて身体で習得するもので、これぞ指導者の力量と言える でしょう。単純に打って走って守って勝てる学校だけを相手にしてい ても全国の舞台に出れる訳はなく、もっともっと野球の研究をしても らいたいと切に願います。

 以上、厳しい指摘ばかりして参りましたが、個々の選手の能力は近 年でも極めて高いレベルにあることは事実です。鶴谷投手や、今大会 でも再三好投した大野投手ら投手陣は非常に層が厚く、この冬しっか り下半身を中心にトレーニングに励めば来年どこまで成長を遂げるか、 期待度は満点です。さらに肉体の強化だけでなく投球術も身に付けば、 どんな試合展開になっても持ちこたえる、心身ともに最強の大投手陣 となるはずです。また攻撃陣も、不動の4番吉原主将を筆頭に、秋の 時点で他の有力校にも全く引けを取らない力は備えています。しかし 現状はただ打っているに過ぎず、もう少し相手の投手心理や配球など を読んだ打法、工夫が必要です。今夏に比べれば多少は改善された兆 しがあるものの甘い変化球の見逃しなどがまだ多く、賢い野球を極め れば楽な試合運びが出来ます。暑い熱い夏の長丁場を考えれば、学院 の武器である頭脳を活かさない手はありません。あと一歩で大金星を 逃した今大会の結果が選手に奮起をもたらし、これまでの学院野球と は違ったスケールに発展していくことを祈るとともに、どうか皆様、 今大会にお寄せ頂いた期待を今後とも現場に注いで頂き、温かくお見 守り下さるようお願い申し上げます。最後になりますが、球場にまで 足をお運び頂きましたOB会員並びに関係者の皆様、本当にありがとう ございました。



2007.10.12
(文責:広崎正隆 S63卒)