[Vol.57] 2008/05/04
15年ぶりの夏シード権獲得!
〜可能性を見出せた春季大会を振り返って〜





 実に、実に長いトンネルだった―今回のシード権獲得の報を受け こう感じたOB会員の方も多かったことと思います。実際ここ数年の 学院の戦力を見ますとシード校であり続けてしかるべきなだけに、 正直15年は待たされた感があります。とはいえ、難敵桜美林も撃破 し堂々と権利を勝ち取った選手たちには、心の底から賛辞を贈りた いと思います。

 今回の春季大会、学院は3年ぶりに本大会から出場しました。昨 秋、ブロック決勝戦で東海大菅生を相手に実力では全く引けを取ら なかった選手たちが一冬越してどこまで成長したか、結果もさるこ とながら内容も大変注目されるものでした。そんな中、初戦の都大 泉戦は3-0の完封、2回戦の桜美林戦は延長10回で5-4のサヨナラ、 シード権がかかった3回戦の私武蔵戦は8-1の8回コールド、敗れた 4回戦の帝京戦は8回まで1-3、最終回に4点取られて1-7だったもの の、全体を通して非常に失点の少ない戦い方が出来たと言えます。 絶対的なエース鶴谷投手に加え、2年生ながらも安定感十分の大野 投手の2枚看板が持てる力を如何なく発揮し、相手打線をきっちり 抑えた、言わば当然の結果だったのではないでしょうか。現チーム にはこの2人以外にもきらりと光る逸材が隠れており、兄貴分の早 稲田大学野球部同様、まさに投手王国と言って過言ではありません。 実際ネット裏では、関係者から学院投手陣を高く評価する声が盛ん に上がっていました。夏は逆にかなりの対策が講じられることも予 想されますが、それも糧にさらなる精進をしてスーパー投手王国を 築いてほしいと思います。

 一方、その投手陣を支える野手陣ですが、守備については一部目 を覆う場面もありました。あえて名前やポジションは出しませんが、 普段シートノック等守備練習をしているのだろうかと疑問を抱いて しまうほどのお粗末さです。投球にリズムがあるだけに守っている 選手も小気味よいテンポで構えているはずで、それにもかかわらず 凡ミスが出るということは、もともとの技量に問題があるとしか考 えられません。守備は目をつぶってもそれを補って余りあるだけの 打撃力があるならともかく、結果を見ればそこまで言えないだけに、 最低限チームに迷惑をかけないレベルにまで急いで鍛えねば、夏も 必ずその弱点を突かれてしまいます。首脳陣の鬼のトレーニングに 期待するばかりです。

 攻撃面では、今大会極度の不振だった4番の吉原主将にはベンチも かなり気を揉んだことと思います。4番で主将という重責は想像に 難くないものの、チームの顔である以上言い訳は通用しません。彼に もう少しいつもの当たりが出ていたら展開が違っていたことは誰も が感じたところです。ただ、ほとんどがフライアウトと、工夫の跡が 見られなかったことを考えると、単に彼だけの問題ではなく試合中 でも適切な指導がなかったのではないかと思わざるを得ません。こ の他にも、相変わらずのバントミス、リードの取り方や次の塁を狙う 走塁姿勢、未だに甘さが数多く露呈しました。帝京戦でも2回裏一死 2塁の絶好の先制機、センター前ヒットで2塁ランナーはホームに帰 ることが出来ず、挙げ句には次打者がスクイズ失敗無得点と、序盤 に掴んだ学院ペースを自ら潰してしまいました。下位打線であった こと、かつ相手は百戦錬磨の帝京であることを考えると、少ないチャ ンスを確実に活かす意識が選手全員に徹底されていたのか、疑問に 感じます。毎回強豪校と互角に近い戦いをする学院ですが、そのほ とんどは敗れています。背景には、こうした細かいところでの1点に 賭ける貪欲さ、即ち試合巧者と呼ばれる緻密な戦術を常日頃から徹 底されていないことが考えられます。単に打って走って守るだけで 勝てないことはこれまでの歴史ではっきりと証明されているわけで すから、もっともっと頭脳をフルに使い相手に嫌がられる野球を目 指すべきです。

 春季大会は結局、帝京が日大三高を3-2で破って2年連続11回目の 優勝を果たしました。しかし、その決勝戦を見た栗山部長の言葉を 借りれば、「投手戦ではなく貧打戦。両チームとも凄さはなく、学 院とも差はない」ということだったようです。ただ、そうは言って も学院は決勝戦まで進むことは出来ませんでした。見た目は変わり がなくても、結果は違ってしまう―悔しいかな、これが学院の伝統 ともなっています。首脳陣には厳しい指摘かもしれませんが、選手 の資質が確実に向上している中、あとは帝京の前田監督や日大三高 の小倉監督、身近なところでは早実の和泉監督のように、明確な、 そして決してぶれることのない指導方針を築いてもらわねばなりま せん。それが、前述した試合巧者になるための一番の近道であると 言えます。OB会員の皆様が本気で甲子園が近づいたと感じる今だか らこそ、現場の意識改革をぜひとも切望する次第です。その結果、 ぜひとも今夏、西東京を制して悲願を達成しようではありませんか! OB会員並びに関係者の皆様、今大会も熱く応援して頂いたことに感 謝を申し上げますとともに、可能性を限りなく秘めた現チームへの 引き続きのご支援を、この場をお借りしてお願いいたします。



2008.05.04
(文責:広崎正隆 S63卒)