2010夏四回戦(都国分寺)観戦記
〜千葉投手ベストピッチ!さあ次は8強だ!〜 2010/07/17





 「1点差ゲームは負けない」(木田茂監督)、試合直後に語ったこの監督の一言は 実に重いものでした。ベスト16を賭けて行われた都国分寺との一戦は、両校の 意地と意地のぶつかり合いの中、5回に集中打を浴びせた学院が3−2の、まさに 1点差で逃げ切りました。土曜日ということもあってスタンドは満員、これまでに ないほど応援に駆けつけて頂いたOB会員や関係者の皆様も、この試合内容には 感動と、さらには自信と勇気を得られたのではないでしょうか。事実、近年の学院の 試合でも最高水準と言っていいくらいの展開でした。 勝利、5回戦に駒を進めました。

 都国分寺とは6月に練習試合を行っていて、そのときは3−1で学院が勝利して います。しかし、今大会に入って都国分寺は、初戦の都昭和に8−4、それも3回裏に 一挙7点奪っての逆転勝ち、次の第3シード八王子に対してもプロ注目の白幡投手から 2得点含む大量10点を挙げるなど、非常に勢いに乗っていました。好調な都国分寺 打線に学院の主戦千葉投手がどのように挑んでいくか、これがこの試合の大きなポイ ントでした。

 その千葉投手、過去2戦は本調子ではなく苦戦も予想されました。ところが試合が 始まると、序盤は変化球主体、中盤以降はストレート中心の組み立て、終盤はまた 要所要所に変化球を織り交ぜ、終始都国分寺打線を翻弄しました。特に、警戒していた 1番から5番までの強打者に対しては慎重な配球で、完全に的を絞らせませんでした。 「組み立ては岸(捕手)に全部任せていましたが、国分寺打線は調子に乗っていてかなり 振り回してきていたので序盤は変化球を多くして相手のタイミングを外しました。逆に 2巡目からはその変化球を見せ球にしてストレート主体の攻め方をしましたが、結果と してうまくはまりました」(千葉投手)。千葉−岸バッテリーの頭脳的な配球には感服 ものです!千葉投手は3回戦に続き2試合連続で完投しましたが、強力打線相手に わずか3安打、自責点0のピッチング内容は安定感抜群です。4回表の無死1、2塁の 大ピンチも冷静に後続打者を一人一人打ち取っていったあたりは、"早稲田のエース"と いう称号を贈っても何らおかしくありません!スタンドで久しぶりに観戦した平成2年 卒で、自身も投手だった宮坂孝氏も、「千葉投手のスライダーは高校生にはとても打て ないと思います。凄い、凄すぎる」と、後輩の雄姿に興奮しっぱなしでした。

 一方、攻撃面では、冒頭にも書きました5回裏の集中打が圧巻!先頭の森田選手が センター前ヒットで口火を切ると、続く千葉投手のときにヒットエンドランが決まって 無死1、3塁。山片選手は残念ながら凡退でしたが、1番の中谷選手がライトの頭上を 楽々と破って貴重な先制打。「フォークが抜けたような球でしたが、(バットの)ヘッドが 残ってうまく運べました。外野フライでもいいと思って高めの球を狙っていました」と、 試合後には調子の良さを示すコメントも!さらに一死2、3塁となった場面で今度は 2番の武居選手が図ったようにショートの上を越す2点タイムリーヒット、都国分寺の 主戦・立松投手は右のオーバースローで球威、制球ともに申し分ない内容でしたが、 一瞬の隙を突いた学院の攻めは非常に見ごたえありました。また、過去2試合はスク イズを絡めて先取点を挙げていましたが、この試合は相手が警戒していることを踏ま えて積極策に出たもので、攻撃の幅もかなり広がったのではないでしょうか。「この集中 力は大したものだね。今までの学院野球にないくらいのレベルの高さを感じるよ」(新崎 盛吾氏 S61卒)と、数々の試合をご覧になっているOB会員もが唸るほど鮮やかな ものでした。

 投手が抑え、少ないチャンスをものにする、これぞ"木田野球"の真髄と言っても過言 ではない展開でしたが、反省材料が全くなかったわけでもありません。木田監督自ら、 「最終回は反省すべき点が多い。5回だけは打線がつながったが、他はつながらなかった」 と話す通り、あと1点取ればダメ押しになるという8回裏、先頭の岸主将がセンター前 ヒットで出塁したにもかかわらず強硬策に出てダブルプレーに。ここは確実に送って相手 バッテリーにプレッシャーをかけていくべき状況でした。そして迎えた最終回、2番から 始まる相手の最後の反撃で、何と先頭のセカンドゴロを慎重になりすぎたのか名手・武居 選手がエラー、直後3番に三塁線を抜かれ1点献上。4番は打ち取ったものの、続く 5番のショートゴロを、バウンドが変わったという不運はあったものの、今度は中谷 選手がグラブに一旦収めながら落球、2点目を失いました。さあ、こうなると俄然 都国分寺サイドは大盛り上がり。1点差に迫ってなおも一死1塁、押せ押せのムード でした。しかしここで送り出してきた代打に千葉−岸のバッテリーは慌てることなく 変化球でカウントを稼ぎ、最後は外角へのストレートで三振に斬って取り、相手に行き かけた流れをピシャリと食い止め、最後の打者もライトフライでゲームセット。仲間の 失策にも動じない千葉投手の精神面の成長ぶりが窺えました。ただ、普段は滅多にミス をしない学院の二遊間コンビも勝ちを意識し硬くなったのか、リズムを乱してヒヤリと させられたのは事実です。これからさらに厳しい戦いが繰り広げられていく中、攻撃でも 守りでもミスをした方が負けるのは常。つまらない綻びは直ちに修正すべく、チーム内の 意識を徹底してもらわなけれななりません。

 とはいえ、学院は4年ぶりのベスト16入りです。19日(月・祝)には、ベスト8 進出を賭けて都片倉に挑みます。ベスト8となれば、昭和30年(1955年)以来、 実に55年ぶりの快挙です。当時は準々決勝で日大二高に1−2と惜敗しましたが、 その前年の昭和29年にはベスト4(準決勝で今の日体荏原高に2−3で敗退)にまで 入り、学院は名実ともに実力校であったわけです。"歴史に名を残せ"―木田・学院丸が 高みを目指して一歩一歩歴史の階段を上っていきますが、次の都片倉は好投手を擁し、 打線も勢いがあり、都国分寺と同様全く侮れません。「千葉はバランスがよくなってきて いる。ここまで来たらどこが相手でも技術うんぬんではなく、勝つんだという気持ちだ」 (木田監督)、「一戦一戦確実に強くなっています。打線につながりが出てきていて、 チームに勢いが出てきています」(小関智也助監督)、「都国分寺戦は終始うちのペースで 試合を進められました。後半のチャンスで1本が出なくて苦しい展開になりましたが、 粘り切れたのは力がついた証拠で、自信になりました」(岸主将)、小関助監督が言う 通り学院は確実に成長しています。それは取りも直さず、岸主将の言葉にも表れて います。

 さあ皆さん、いよいよですよ!これまでも何度となくベスト16までは来ていますが、 こうした素晴らしい内容で、そしてチームの雰囲気も最高潮で上がってきたのは本当に 久しぶりです。それだけに、大いに期待出来ます。油断は禁物ですが、19日には 都国分寺戦を上回る大応援団で後輩を後押しし、一緒になって勝利を祝おうではあり ませんか!歴史に刻む1ページを、ぜひともご自身の目で見て、耳で聞いて、感動を 味わって下さい。昭島球場で皆様のお越しをお待ちしております。



2010.07.17
(文責:広崎正隆 S63卒)