2010夏準々決勝(vs東亜学園)観戦記
〜歴史を破り、歴史を作る!いよいよ早早決戦!〜 2010/07/23





 冒頭、この観戦記が遅くなりましたこと、お詫び申し上げます。でも皆さん、なぜかは 分かって頂けるでしょうか?その通り、昨夜は56年ぶりの準決勝進出を祝い過ぎました!

 と、言い訳はその程度にして、55年ぶりの準々決勝は、これまで公式戦では一度も 勝ったことがない東亜学園が相手でした。5回戦では都日野とのシード対決を11−1の 6回コールドで制し調子が上向きな東亜、おそらく学院OB以外は誰もが東亜学園の 勝利を思い描いていたことでしょう。しかし、同じ18歳や17歳がやる高校野球には "絶対"はないのです。主戦千葉投手が、5回戦の都片倉戦を遥かに上回る好投を見せ、 強打を誇る東亜学園を7安打完封シャットアウト、見事1−0で理想的な勝利を収め ました!学院がシード校に勝ったのは、平成14年(2002年)の都国立戦以来8年 ぶりというおまけ付きです!!

 試合前、東亜学園の名将・上田監督は木田茂監督(S50卒)に、「学院の試合は すべてビデオで見て研究しました」と話してきたそうです。それはつまり、千葉投手を 徹底に分析して、打ち崩しますという宣言でもあったのかもしれません。それを知ってか 知らずか、千葉投手は何と集合時間に30分も遅刻、「メールで回ってきた集合時間を 完全に見間違えました。11時半集合を12時半と思って、普通に7時に起床、軽く ジョギングしてストレッチもして、それでもちょっと早めに行ったらもう誰もいません でした」(千葉投手)、東亜学園もさすがにここまで学院の主戦が腹据わっているとは 計算してなかったでしょう!ついでに書きますと、千葉投手の遅刻は珍しくはなく、 試合前木田監督は、「千葉は遅刻した時の試合は3回でいつもノックアウトされる。だから 今日千葉は2番手にするって言ったら千葉が投げさせて下さいって言うので先発させる。 まあでも、持つかなー」と不安を覗かせる一方、岸主将は「準々決勝でみんな緊張して 舞い上がっていましたが、千葉がいつものように遅刻してきて逆にみんな落ち着きました」、 小関智也助監督(H21卒)は「(木田)監督が千葉は2番手だと言ったとき千葉本人も そうなんだとがっかりしたようにしてましたが、結果監督も実はふざけててやっぱり先発 だと。それで一気に空気が和みました!」。試合前のこんなエピソード、これが今のチーム カラーを物語っていると言えます。本当に坊主頭にしてきた木田監督、何だかんだと 口では愚痴りながらも、選手達に愛され信頼され、そして今や西東京ベスト4の監督に。 立派に名将の部類に入ってきたのではないでしょうか。

 その木田野球の真髄を見たのが、先取点であり決勝点であり、千葉投手を援護するに 十分でかつ、東亜学園に重くのしかかった1点を取った5回裏の攻撃でした。相手の 内野のエラーから出塁した柴田選手が牽制悪送球で二進後、千葉投手が簡単に一発で バントを決めて一死3塁、9番山片選手に打順が回ります。前の都片倉戦から外角の スライダーに苦しみ、東亜学園バッテリーもしっかりそこを突いてスライダーで 勝負してきます。しかし、学院がこれまでにもスクイズで得点してきていることを データとして持っているだけに、ウエストボールも投げカウントを2−3にまで してくれました。「ここでスクイズかも」、木田監督と同期のS50卒、上野圭一氏の 「木田のことを知っている人間なら思ったはず」との言葉通り、山片選手にこの タイミングでスクイズのサインを出したのです!「その前の打席も三振で、自分は タイミングが合ってませんでした。それを見て監督は自分にスクイズのサインを 出したのだと思いますが、カウント2−3で絶対に外してこないと思いましたし、 バント練習はしっかりやってきましたのでプレッシャーもなく、自信ありました」 (山片選手)、この自信が見事、学院を勝利に導く1点につながりました。「木田さんは 本当にいやらしい野球をやるよな〜!あそこでスクイズなんて、相手もさすがに思わ ないよ!」(富岡隆臣OB会長 S55卒)、"1点へのこだわり"を掲げる木田野球が 完全に相手の裏をかいた瞬間でした。

 しかしそれにしても、神宮球場に仕事そっちのけ(?!)で応援に駆けつけて頂いた 社会人OB会員の皆さんからは、「学院が1−0で勝った試合って一体いつ以来だろう」と 口々に疑問の声が上がりました。そこで調べてみましたら、何とこれも55年ぶりでした! 55年前ベスト8進出を決めた試合、対明大明治戦に1−0で勝って以来のことなのです。 次々と歴史の扉を開いていく、記録を作っていく現学院野球部、55年ぶりのベスト8の とき「実感沸きません」と答えた岸主将に改めて聞きました。

筆者:今度は56年ぶりのベスト4。その重みはどう?
 岸:56年前というのは黒田さん(前助監督)の頃なんですよね。そのとき以来かと 思うと、今こうして自分がキャプテンをやらせてもらっているのがとてもすごい ことで、本当に嬉しいです。次勝てば、初めての決勝進出ですし、学院の歴史に 自分たちの名前を残したいです!
筆者:そんな大事な一戦だったけど、ベンチの空気はどうだった?
 岸:前の試合からそうでしたが一体感がすごくあって、点が入らなくても少ない チャンスで絶対に点を取ってやろうと思ってました。
 筆者:2試合連続ノーエラーだったね!
岸:はい!守備からリズム作るのがうちの野球ですし、次の早実はバッティングが すごい印象ありますが、うちはチーム力で勝ってきました。向こうはどちらかと 言うと"個"の力、団結してやれば勝てると思います。
筆者:スタンドにいた仲間の応援も励みになった?
 岸:今日は一段と応援がすごかったです。苦しいとき、本当に助けてもらいました。

 いろんな方々から、この事務局便りは文章が長すぎだとご指摘を受けますが、 すみません!朝日新聞よりも毎日新聞よりも読売新聞よりも、あるいはどの スポーツ紙よりも学院野球部に食い込んでいるため、ついついあれもこれも 書いてしまいます!まだまだ書いちゃいます。岸主将以外にもいろいろコメント を取りましたので、お伝えします。

菱倉:この前も言った通り、しっかり足を生かせました!次も、足を見せます!!
津田:三塁コーチャーとしては今日は回す機会なかったですが、次はぐるぐる回します!
森田:(5番に打順も上がり)チャンスメーク出来るように頑張ります!
柴田:(毎試合センターで美技を見せていることに)次も外野を走り回って千葉を絶対に 助けます!
尾木:(記録員としては)スコアにヒットを書き込むことが今日は少なかったですが、 次は書きごたえある展開で頑張ります!
関:文字通り、全員野球で絶対に勝ちます!
時丸:早実戦の土曜日、絶対に勝ちますので応援に来て下さい!
関口:ベンチがすごくまとまってます。絶対に次も勝ちます!
岩崎:(応援団長としては)甲子園しか考えていません。早実サイドには絶対に調子に 乗らせません!本物のワセダはうちです!!
足立:"ハンカチ王子"のワセダなんて、もう言わせません!
玉置:今日は自分は何も出来なかったので、次は死んでもオーバーフェンスして見せます!

 どうですか!こんなに明るい明るい、学院野球部。これまででしたら1−0で迎える 最終回なんて緊張で体は動かなくなるものですが、千葉投手は「8回までもピンチはあり ましたが打ちこまれてはいなかったので、自分のピッチングさえすれば打たれないと 思ってました。緊張は全然しませんでした」。木田監督が数多くの強豪校と練習試合を 組み選手達に甲子園クラスの野球を体感させてきたことが、今こうして生きているの です!次は中一日での準決勝ですが、「テンションも上がってますし全く疲れはありません。 早実を1点以内に抑え込みたいです」(千葉投手)と、全国が注目するであろう早早決戦に 千葉投手は気合いを漲らせていました。何せ、初戦の都秋留台戦で足がつって途中降板 した以外4試合すべてを一人で投げ抜き、しかも自責点0、防御率0.00の大投手、 もう西東京を代表する左腕と言っても言い過ぎではありません。木田監督も、「とにかく 千葉次第だね。まあボロ負けするか、得意の1点差で勝つか、そのどっちかでしょう。 スクイズも研究されてるだろうし、これからの試合は選手達に気持ち良く打たせてやり ます。早早決戦は自分が監督になったときから夢に描いていたものなので、自分自身も 楽しんでやるだけです」、小関助監督は「いつものうちの野球をやるだけです。早実は 学院のことを足元にも及ばないと見てるでしょうから、その油断しているところをぜひ 潰したいです!」。2年前、15年ぶりのシード権を得て大会に臨み、法政大高に敗れた 当時の主将、小関助監督と同期の吉原範明氏(H21卒)は「のびのびやっているのが 本当に素晴らしいと思います。ここまできたら気持ちが強い方が勝つので、学院は挑戦者 として、楽しんでプレッシャーに押しつぶされずにやってほしいです。自分は(大学 野球部の)練習があるので応援は厳しいですが、絶対に勝ってもらいたい です」と、心強い激励の言葉をもらいました。

 さあ、いよいよ早早対決、記録づくめの準決勝です。24日、12時半開始予定です。 土曜日で、かつもう一つの準決勝が日大鶴ケ丘と日大三高という日大勢同士、いやが上 にも関心が集まります。神宮球場は大観衆が予想されますので、皆様普段より早く球場に お集まり下さい。そして、勝利の雄たけびを上げましょう!あと2つ、未だ見ぬ頂きが 一体どんな景色なのか思いを馳せつつ、精一杯後輩達を鼓舞し、後押しして上げましょう! "都の西北"は早実には歌えません。我らこそが早稲田の本流だという自負を胸に秘め、 歴史的一戦を見守りましょう!応援、よろしくお願いします。



2010.07.23
(文責:広崎正隆 S63卒)